「蓬生…っ…ちょ、離してって」
「いやや…って、何度も言うてるやろ」
「もうすぐ皆帰って来るってば!」
「せやから、見せ付けたらええって…これも、何度も言うとる」
くすくす笑い、背中から白い腕をしっかり腰に回して抱きついている彼を振りほどこうと身体を捻るが、離してくれそうもない。
「蓬生は良くても、あたしは…」
「恥ずかしい?」
「…わかってるんじゃん」
「ふふ…そうやって恥らうあんたを見るのも、好きなんやからしゃあない」
「悪趣味…」
「なんとでも言い…俺は、あんたのそういう素直な所が愛しゅうてたまらんのや」
眩しそうに瞳を細めて、耳元に甘く囁く蓬生は…卑怯だと思う。
そんな風に言われたら、この手を振りほどく事なんて出来るはずがない。
「なぁ、俺のこと好き?」
「知ってる、くせに…」
「今聞きたい…言うたら、どうする」
後ろから肩口に顎を乗せ、頬を摺り寄せる姿は、まるで猫が甘えているようだ。
ステージで演奏している姿や、学業に励む姿からは想像も出来ない。
――― あたしにだけ、見せてくれる…素顔
「…いつも、これに負けるんだよなぁ」
「な、…焦らさんで、はよ言うて?」
耳に唇を掠めさせて強請る声は、酷く甘い。
「そんな事しなくても…いつも、いつでも、大好きだよ…蓬生」
「もっと」
僅かに体重をかけて、頭を後ろに倒せば…同じように体勢を少し後ろにずらした蓬生が、あたしの身体をしっかり抱きとめてくれる。
「…好き、大好き」
「俺も、好きやで」
太陽の陽射しを遮るように、蓬生の顔が近づいてくる。
暑さの所為で乾いていた蓬生の唇を潤すように、そして、この想いをしっかり届けるよう…暑い日の午後、ほんの少しの間、セミの声も聞こえなくなるほどキスを交わした。
「…すまん、如月。もう暫く、庭には誰も近づけないでくれ」
「あぁ、構わないが…大丈夫なのか?」
「あー…あいつには、がついてるから……問題ない」
「そうか。何か必要なら言ってくれ」
「…あぁ、感謝する」
大きくため息をついて、如月にラウンジ立入禁止を認めさせた。
「ったく、あの阿呆…ちゃんと時間見とけ、言うたやろ」
ぼそりと千秋の口から漏れた文句が、思わず関西弁になってしまったのは…心底、心からの声だったからに違いない。
どうしても、蓬生の話を書くと、千秋が出てくる。
ちなみに千秋の話を書いても、蓬生が出てきます。
ある意味バランスが取れているのか、作者の愛が偏っているのか…謎。
菩提樹寮の庭にある長いすとか、藤椅子は蓬生のためにあると思う(違います)
そこでじゃれてる二人は、恐らく青少年の目には毒なので千秋はいつも気を使います。
そしてこの話を書いていて気づきました。
ラウンジ立入禁止にすれば、中庭で何しててもバレな…げほほっ!
逆を言えば、部屋から中庭見えないじゃーんっ!!( ̄口 ̄;)
しまった、どっかの話で部屋から中庭見ちゃったよorz
今度時間あったら、手直しします…。
ゴリヨウハ、ケイカクテキニ…